公認会計士高橋正哉の実践ブログ

企業のビジョン達成を社外CFOの立場から実現する一方で、独立会計士又は上場企業の社外役員として自らも経営の一旦を担う筆者が、会計・財務の専門分野に限らず、日々の活動から、企業経営や自己成長のヒントとなるような事項・想いを素直に、ありのままに、お伝えすることを目的として綴っているブログです。

カテゴリ: IFRS

経営財務3174号 2014年8月4日 より

2014年7月25日に開催されたASBJの税効果会計専門委員会で、経団連によるIFRS・米国基準適用企業に対する「税効果会計(繰延税金資産の回収可能性)に関するアンケートの概要」を参考に、繰延税金資産の回収可能性について議論されたようです。

当該アンケートの概要から、日本基準⇒IFRS及びUSAGAAP(以下、「IFRS等」という)へ修正するにあたっての、繰延税金資産の回収可能性の判断に係る差異(実務上の対応)が、一部、読み取れます。

 <アンケート結果の概要>

調査期間 :6月から7月18

調査対象 IFRSまたは米国基準適用(予定も含む)企業58社(IFRS32社)

分析対象 :回答を得た39社(IFRS22社)

回答率 67.2

質問(自由記述方式) 

次の3点について,単体(日本基準)から連結(IFRS,米国基準)を作成するにあたり,繰延税金資産の回収可能性の判断の再評価・連結調整を行っているか?

①繰延税金資産の回収可能性の判断基準を,66号の5分類から変更しているか

②課税所得の見積り年数を66号の「5年」の目安から変更しているか

③繰延税金資産の回収可能性の閾値(「可能性が高い」から変更しているか)

66号の判断を連結で調整する会社多数

①については,単体の判断を連結でも用いるという会社もあったが,単体の判断をベースとして必要に応じて連結調整を行っているとの回答が多かった。特に,「スケジューリング不能な将来減算一時差異については,66号とIFRS・米国基準間に差異があるため連結で調整している」との回答が多数あった

②については,連結においても66号の「1年」ないし「5年」という課税所得の見積り年数をベースとする企業が多かった。「単体のほうが保守的な見積りができるので,連結では見直していない」,「見積り期間3年という,米国基準上の実務慣行等を参考にしている」との回答もあった。

なお,③については,変更している会社はなかった。


これだけでは詳細を掴むことは難しいですが、一つ注目すべき情報としては

「スケジューリング不能な将来減算一時差異については、66号とIFRS・米国基準間に差異があるため連結で調整している」との回答が多数あった

という個所ではないでしょうか。

これは日本基準における監査委員会報告第66号の会社区分が①以外(の②~⑤)の会社については、スケジューリング不能な将来減算一時差異については、回収可能性がないとして繰延税金資産を計上することはできない(評価性引当の対象)一方で、

IFRS等ではスケジューリングが不明確な将来減算一時差異であっても、将来、課税所得が発生する蓋然性が高い場合などには、スケジューリングが不明確であっても最終的には回収できる可能性が高い、といった判断根拠に基づくことが、想定されます。

なお、

「66号の判断を連結で調整する会社多数」

といった記載がありますが、これだけ見ると、IFRS等では66号の判断を適用できないといった誤解を与える可能性があるのではないか、と思います。

個人的には(私の経験上)あくまでも

結果として66号の判断を概ね利用(踏襲)しているが、一部だけIFRS等適用による修正が発生する

というニュアンスではないかと考えています。
 

ITPro「姿を現した日本版IFRS、IT各社は新たなビジネスチャンスに期待」の記事より。

JIMS(日本版IFRS)のピュアIFRSからの修正項目は現状「のれんの非償却⇒償却」と「株式売却損益等のノンリサイクリング⇒リサイクリング」の2点に限られ、ITベンダー各社が言うように「バージョンアップ」か「既存機能で対応可能」で、新たな取り組みは(ほとんど)必要ないでしょうね。

当たり前のことですが、IFRS適用はシステム導入により解決するものではなく、それ以前の方針決めや仕組み作りが極めて重要で、それをどこまでシステム化できるかという点がポイントです。

ちなみに規模が大きくなくそれほど複雑な論点がない企業がIFRSを適用するケースでは、(固定資産の減価償却を除いて)新たなシステム対応の必要性が生じるケースは稀だと思います。

マネジメントの方々はこの辺りにご留意頂き、IFRS適用によるシステム対応の是非についてご検討下さいませ。

企業会計基準委員会(ASBJ)は2014年7月31日付で公開草案「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)(案)」を公表しました。

ものすごく長い題名です。「IASB等に配慮してIFRSという名称はあからさまに使用しないが、内容的にはIFRSを少し修正しただけの基準だよ」という意図を題名で表すとこうなるのですね~

以前、J-IFRS(日本版IFRS)の行方は?で記載したとおり、

Pure-IFRSからの修正は以下の2点

❑のれんの非償却⇒償却に修正
❑その他包括利益に計上した項目のノンリサイクリング処理⇒リサイクリング処理に修正
⇒分かりやすい例で言うとその他有価証券等の売却が実現した場合等に日本基準と同様にその他包括利益から当期純利益に組替調整することに修正


公開草案等の中で個人的に気になった点は以下のとおり。

「修正国際基準」の公開草案の公表にあたって

 

36. 今後、我が国でIFRS の任意適用を積み上げていくためには、適用や解釈のあり方について、さらに検討を進める必要があると考えられる。その際、規範性を有するガイダンスを開発する場合は、IFRS を適用している諸外国での取組みを参考にするとともに、必要に応じて、IFRS 解釈指針委員会と論点の共有を図りつつ、検討を進めることが適切と考えられる。また、国内における議論を踏まえて規範性を有しない教育文書を開発することにより、IFRS の適用を容易にすることも必要と考えられる。

 

37. 本公開草案には、ガイダンスや教育文書に関する提案を含めていないが、今後、それらのあり方も含め検討を行う予定である。


「コメントの募集」の「質問7」でも記載されていますが、ガイダンスや教育文書の開発は実務的な観点からは最も力を入れて欲しいところです。日本基準の任意適用も徐々に増えており、論点となる個所もある程度明確になってきていますので、これらの論点を中心に早急に実現して頂きたいですね。

現状はPure-IFRS基準書の翻訳データさえ容易に入手できるような状況にはなく(紙媒体は容易に入手可能)、実務者の立場からはもっともっとIFRS適用のインフラ整備が必要ではないかと感じています。

従って、IFRS基準書の翻訳データをはじめ、ガイダンスや教育文書もASBJのWebsiteなどで掲載し、容易に閲覧できるような状況にすることで、IFRS導入に関するハードルを下げていくという活動が必要ではないでしょうか。


その他、

「修正国際基準」の公開草案の公表にあたって

 

25. このような検討の結果、約30 個の論点が抽出された。これらの論点は、「(a)会計基準に係る基本的な考え方に重要な差異があるもの」と「(b)任意適用を積み上げていくうえで実務上の困難さがあるもの(周辺制度との関連を含む。)」に大別される。

この30個の論点に関する議論の過程をまとめたものを公表することも、IFRSを理解するのに役立つものになるのではないかと思います。


IFRSを巡る世界と日本の動向という刊行物が新日本監査法人のHPに掲載(2014年7月22日付)されています。

 (Contents)
1.はじめに
2.IFRSを巡るこれまでの動向
  2-1.世界の動き
  2-2.米国の動き
  2-3.日本の動き
3.日本の最新動向
  - 任意適用の積上げに向けた取組み -
4.日本における今後の動向
2009年に日本がIFRS導入に関するロードマップを公表してから現在までの強制適用の是非を巡る紆余曲折の流れを、世界や米国のIFRSに関する動向に照らして、どのように変遷してきたか、これを時系列に分かりやすくまとめたもの。

これからIFRS導入を検討するという方(企業)や、大きな流れを掴んでおきたいという方には最適です。

これの続きで

のれんはなお償却しなくてよいか―のれんの会計処理及び開示

主に

❑第1章:イントロダクション
❑第2章:のれんの会計処理の要求事項の変更
❑第3章:現行の減損テストの改善
❑第4章:IAS第36号における開示の改善
❑第5章:追加的な検討事項

で構成され、今回は「第1章:イントロダクション」の中で印象に残った事項をご紹介。

米国における動向

  • 20141月にFASB、…(中略)…非公開企業に…(中略)…のれんを10にわたり定額法で償却する会計上の選択肢を認めている。
  • 上記に加え、FASBは公開企業及び非営利企業ののれんの会計処理をレビューするプロジェクトを開始し、…(中略)…IASBIFRS3号の適用後レビューを完了し、それに関する発見事項を公表するまで、それ以上の議論を延期

国が2001年に「減損のみアプローチ」を採用した理由

  • 多くのアナリストが、のれんの償却費を分析の際に無視していると述べており、多くの企業は、事業の業績を測定する際にのれんの償却費を無視
  • のれんの償却が完了した後の期間における報告利益の増加は、忠実な表現であるとは考えられない可能性がある。このような利益の増加は、過去に「二重計上」されていたのれんに関する費用計上を中止することから生じているためである。
  • 適正な減損テストを実施し適切な開示を行えば、のれんの非償却は財務報告の透明性を促進し、従って、財務諸表に依拠する人々に有用な情報を提供する。

FASBの結論に関する懸念

  • しかし、FASBの結論に関して相当の懸念があった。これは主として、取得したのれんは、その後の期間にその価値が消費される「消耗資産」であるとみなされていたことによるものであった。減損のみアプローチは本質的に、のれんが配分されている同じ資金生成単位の中で創出される「自己創設のれん」の資産化を企業に認めるものであるという主張があった。

IFRSが償却及び減損アプローチを選考していた理由

  • 取得したのれんは、消費され、自己創設のれんに置き換わる資産である。
  • のれんの償却は、…(中略)…有形資産について採用しているアプローチと整合する。実際に、企業は、有形固定資産の項目の耐用年数を決定し、当該資産をその耐用年数にわたり規則的に減価償却することが要求されている。取得したのれんを異なる方法で処理することには概念的な理由はない
  • 規則的な償却は、のれんの事後の処理に対する実務的な解決策を、許容可能なコストで提供する。

結果的にIFRSが減損のみアプローチを採用した理由

  • 主に、のれんの耐用年数及び消費パターンを信頼性をもって決定することは可能でなく、ある特定の期間にわたる償却費は単なる恣意的な見積りとなるという理由により、減損及び償却アプローチを棄却した。

EFRAG及びOCIのアンケート調査の結果

  • 過半数をやや上回る回答者は、概念上、取得したのれんに関する価値の現象を認識しないことは「消費された」取得したのれんが置き換わるために、自己創設のれんが認識されることを意味することに同意した。さらに、多くの人々は、他の無形資産とのれんに異なるアプローチを採用する重要な概念的理由がないと考えた。
  • …(中略)…減損の要求事項が景気循環増幅的であると考えた回答者は、次のことを説明した。「償却をしないと企業についての価格が高くなるであろう。」「減損損失は通常、非常に遅れて認識され、減損損失が認識される時には事業に対する期待はすでに悪化している。」
  • 過半数をやや上回る作成者は、IFRSの適用に関する彼らの経験によると、のれんの回収可能価額の見積りの方が、のれんの消費パターンの見積り(耐用年数の見積りを含む)よりも困難でありかつ負担が大きいと考えていた。 



ASBJの調査の内容は上記の内容に概ね包含されるので割愛しますが、どう考えても「償却及び減損アプローチ」の方が理論的だと思いますし、(ざっくり言うと)のれんの償却年数の見積りさえクリアできればいいわけです。

他の資産でも耐用年数を見積っているわけですし・・・、のれんとは言え、知恵さえ絞れば見積れるのではないか、と思っているのは私だけでしょうか。

続きはまた。




この記事の続きで

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2014年7月22日付けで、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)及びイタリアの会計基準設定主体(OIC)と今日で、のれんの会計処理と開示のあり方に関するグローバルな議論に寄与するために、ディスカッション・ペーパー「のれんはなお償却しなくてよいか―のれんの会計処理及び開示」を公表しました。

2014年9月20日まで当該DPに対するコメントを募集しているようです。

(プレスリリースより)
本DPの中で、リサーチ・グループは、関係者が識別した欠点を改善するために考えられるアプローチについて、(1)のれんの会計処理の要求事項の変更(2)減損テストの要求事項の改善(3)IAS第36号の開示要求の改善のいずれか又はその組合せを考慮することによって検討しています。分析の結果、リサーチ・グループは、のれんの償却を再び導入することが適切であろうという結論に至っています。
(本文より)

分析の結果、リサーチ・グループは、のれんの償却を再導入することが適切であろうという結論を下している。なぜならば、のれんの償却は、企業結合で取得した経済的資源の一定期間にわたる消費を合理的に反映するものであり、適切なレベルの検証可能性と信頼性を達成する方法により適用できるからである。さらに、リサーチ・グループは、開示要求の領域においてより一層の改善を検討すべきであると結論を下した。


本DPで、「のれん」に関する論点が概ね網羅されているのではないか、と思います。

今後、日本国内でのベンチャーの成長のためにはM&Aの活発化が必須であり、その際、「のれん」の論点は避けては通れませんから、会計基準に記載された内容に従って粛々と会計処理するのではなく、

❑「のれん」とはそもそも何なのか?
❑「のれん」は償却すべきなのか、償却すべきでないのか?
❑償却するのなら、何年で償却するのが良いのか?


などの問いに明確に答えることができるようにしておく

これが、ますます重要になってくるものと考えています。

続きはまた。


公開草案が出ない! 大義失った日本版IFRS(ダイアモンド オンラインより)

日本版IFRSが迷走しています。
ここまで来て「公開草案を出さないという選択肢はない」のではないでしょうか。。。

以前、J-IFRS(日本版IFRS)の行方は?でも記載したとおり、

日本版IFRSを策定するための

❑目的と    
❑なぜ作成しなければならないのかという理由

が十分に議論されていない結果ではないかと思います。

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