公認会計士高橋正哉の実践ブログ

企業のビジョン達成を社外CFOの立場から実現する一方で、独立会計士又は上場企業の社外役員として自らも経営の一旦を担う筆者が、会計・財務の専門分野に限らず、日々の活動から、企業経営や自己成長のヒントとなるような事項・想いを素直に、ありのままに、お伝えすることを目的として綴っているブログです。

カテゴリ: 会計・税務(日本基準)

中小企業の決算書における

利益の意味合いについて考えてみましょう。

ほとんどの中小企業では

税務申告目的のために決算書が作成しています。

つまり、

税金を正しく計算するための決算書です。

(あるいは、税務調査で指摘を
 受けないための決算書)

あくまでも、

税金を正しく計算することが目的ですから、

税務申告目的の決算書では

会社の経営状態(自分の健康状態)を正しく把握するのは無理

とまでは言いませんが、

目的が目的なのでだいぶと割り引いて考えておく

ことが重要です。


例えば、固定資産は

耐用年数にわたって費用計上(減価償却)していきますが、

ほとんどの企業で設定している耐用年数は

国税庁が定めた耐用年数表に基づいています。


この耐用年数表(国税庁)で設定されている年数は

実際に使用する固定資産の年数よりも長いことはあっても

短いことはほとんどないというのが実状。


税金をなるべく多く取りたいというものが

背景にあります。


特に、店舗の内部造作の耐用年数(国税庁)は

30年~40年くらいで設定されていますが、

実際にそこまで使用することは

皆無というのが実態でしょう。

(業態にもよりますが、
 少なくとも10年前後で改装くらい
 はするはず。)

要は、

税務申告用の決算書では

利益が課題に計上される傾向が極めて強いわけですね。


それを理解しておくことが重要です。


上場企業でも国税庁の耐用年数表に基づいて

耐用年数を決めていることが多いのですが、

これは、

会計と税務の耐用年数を異なるものにすると

かなり実務上の手数が煩雑になるからです。


ちなみに

アメリカでは

会計用(経営実態を知るための決算)と

税務用(税務申告を行うための決算)で

完全に切り離した実務が行われているようです。


このような現実をご理解頂いたうえで、

自社の決算について一度向き合ってみるのも

良いかも知れませんね。


(まとめ)

■税務申告用の決算書では、
自社の経営実態を把握するのは
難しいと考えた方が良い。
そもそも目的が会計とは違う。

■例えば、
固定資産の耐用年数なんかは、
税法と実態が大きく乖離していることがあり、
店舗を多く持つような業態では決算書の
利益を疑ってみた方が良い。

■アメリカでは
税務申告用の決算と
経営実態を把握するための決算を完全に
切り離した実務が行われている。

■一度、
自社の決算を経営に活かせているか、
向き合ってみることが重要ではないか。

以前、

会計とは

企業のお金の流れを記録すること

それ以上でもそれ以下でもない

と申し上げました。
(「記録」がもの凄く
 重要なのですが・・・)

つまり、

会計は一般的に「過去の記録」と捉えられているわけです。


しかしながら、

上場企業が適用する会計基準の世界では、

それだけ(会計=過去の記録)では収まらないような面が多分に含まれています。


どういうことかと申しますと

資産の金額を決定するのに、

その資産を使用して得られるであろう「将来」キャッシュ・フローを使ったりしているのです。

例えば、

100円で取得したものでも、将来50円しか得られないのであれば、50円で計上し直すという会計処理を行ったりしています。

しかも、

その「将来」というのが、10年後や20年後、さらには半永久的に!!というケースもあります。

正直なところ、

1年後や2年後でさえ、分からない世の中なのに、

何十年後のことを予測して会計処理するのですから、

相当な不確実性が伴うわけです。


そういう意味で

会計には「アート」的要素が多分に含まれている

と思っています。


「アート」ということは

(誤解を恐れずに言うと)

「いかようにでも表現できる」

ということになりますが、

少なくない割合の人が、そのような事実を知らずに、

決算書を見てみたり、(株式)の投資意思決定を行ったりしているように思われるのです。


とは言え、

個別具体的な会計基準の内容は、ほとんどの方にとって、知る必要性の低い事であり、

勉強することの費用対効果も決して高くはありません。


そうであるならば、

「会計にはアート的要素がある」

ということだけでも知っておいて頂ければ、

随分違った見え方がするのではないか。

そんな風に考えております。


(まとめ)

■会計は企業のお金の流れを記録することに他ならないが、
一方で、(上場企業が適用する会計については)アート的要素が
多分に含まれている。

■アートということは、
(誤解を恐れずに言うと)いかようにでも表現できるということでもあり、
これを前提に決算書を眺めることが重要である。

■これを理解していないと、決算書の見方を誤まったり、
株式の投資意思決定を誤るということも、ないとは言えない。

■会計にはアート的要素が含まれている
ということだけでも知っておけば、随分見え方が変わるのではないか。

2014年8月29日 日本経済新聞より

ホンダ、課税訴訟で勝訴 東京地裁、追徴75億円取り消し

ホンダがブラジル子会社との取引で利益を移したとして追徴課税されたことを不服として、国に取り消しを求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。増田稔裁判長はホンダ側の主張を全面的に認め、約75億円の課税処分を取り消した。

 関連企業との取引を利用した海外への利益移転を防ぐ「移転価格税制」を巡っては、異議を申し立てる企業が相次ぎ、多額の課税処分が取り消される例が目立つ

 今回のホンダの課税処分で東京国税局は2004、ブラジル・マナウス市にあるホンダの現地子会社の二輪車製造販売事業の利益の一部計約254億円について「親会社の日本側に帰属すべきだった」とし約130億円を追徴課税した。ホンダはこれを不服として提訴した。

 増田裁判長は判決理由で、現地子会社のある地域がブラジル国内で税制上の優遇を受けている「マナウスフリーゾーン」内にあることを重視し「営業利益の59%が税優遇によるもので、影響が大きい」と指摘した。そのうえでブラジル国内の別の地域で税優遇を受けていない同種企業と比較するなどして追徴課税額を算定した東京国税局の手法を誤りとし、「移転価格税制の課税はできない」と結論付けた

(中略)

06に米合弁会社との取引を巡り大阪国税局から約571億円を追徴課税された武田薬品工業は、いったん全額納付したうえで異議を申し立てて、昨年3月、全額の課税取り消しが認められた。

 05に東京国税局に約213億円の申告漏れを指摘されたTDKも、異議申し立てや東京国税不服審判所への審査請求などをして一部の処分取り消しが認められ、約110億円が還付された。


このホンダの件は、2004年の課税分なので約10年前の話。武田薬品工業やTDKも10年近く前の話であり、実際の税務調査はその後に行われているとしても、結構昔の話です。

当時の移転価格に係る国税当局の調査方針や調査内容が不明確であったことを裏付ける判決ではないでしょうか。

今現在においては、ここまでのことはないと信じていますが・・・。
 

2014年8月29日 日本経済新聞より

外形課税 倍以上に、赤字企業の負担増へ 政府・与党 

政府・与党は赤字の大企業の税負担を増やす検討に入る。給与の総額に基づく課税など、企業が黒字か赤字かに関係なく納める税金の割合を2015年度から2倍以上に増やす。代わりに黒字企業の税金を減らす。安倍政権は黒字企業の利益にどれだけ税金がかかるかを示す法人実効税率の引き下げを公約しており、これを1.5%分以上下げる。

 

(中略)

 

政府が党税調に示すのは(1)15年度に外形標準課税を法人事業税の2分の1にまで広げる(2)同じく8分の5まで広げる――の2案。8分の5に広げれば、実効税率の下げ幅も約2.3%に拡大する。党税調は政府案をたたき台に、外形標準課税をどれだけ広げるかを年末までに決める。

 政府・与党には資本金1億円以下の中小企業にも外形標準課税を入れるべきだという声もある。ただ、経営体力に劣る赤字の中小企業への課税には慎重論が強い。まずは大企業への外形標準課税の拡大を検討する。

 外形標準課税が広がれば、収益の高い企業は税負担が減るため、投資の拡大などの効果が期待できる。赤字企業にとっては、できるだけ早く黒字に転じようとする意欲が高まるとみられる。

 一方で、外形標準課税は給与総額が増えるほど課税額が増えるため、企業が給与を増やしにくくなるとの指摘もある。現在の仕組みを単純に広げるのではなく、課税方法を見直すべきだとの声もある。


外形標準課税のうち給与の総額に応じた税額分を2倍以上に引き上げることで調整中との記事。

その代わり、資本金への課税は廃止する方向性のようです。

エクイティによるファイナンスで多額の資金を設備に投資する必要がある企業にはメリットがあり、政府が掲げる資本市場の活性化の流れや設備投資促進の流れと一致したものであると思われます。

しかし、

大企業にとって、外形標準課税の改正如何が、赤字から黒字に転じる意欲の向上に、寄与するとはあまり思えません。

ちなみに、

資本金1億円以下の中小企業に外形標準課税が導入された場合の影響は非常に大きいと思いますね。どこまで導入されるかによりますが、節税の観点からの法人化メリットも小さくなる可能性があります。
 

監査委員会報告66号(繰延税金資産の回収可能性)の見直し議論で記載した内容の詳細がASBJのホームページにUPされております。

少し復習を兼ねることになりますが、

案1)66号の内容を引き継がず,例示区分自体を廃止する 
案2)例示区分は用いるが,内容を見直して新たな区分を設定する 
案3)現行の例示区分をそのまま利用,将来の合理的な見積可能期間を見直す

のうち、どれがベターかということが、議論されてます。

これを読んで改めて思いましたのは、

将来の課税所得の見積りという不確実性の高い事象について議論しているわけですから、

どの案を採用するかによって多少の違いはあるものの、どこまでいっても企業間の比較可能性や合法的利益操作の余地は消えないのではないかと思うわけです。

従って、

最も現実的かつ強力な解決策監査員会報告第66号自体を監査のための基準ではなく、

名実ともに企業が遵守すべき会計基準として定めたうえで

◆適用した会社区分(①~⑤のいずれか)
◆その判断に至った経緯(過去の業績推移や繰越欠損金の残高の金額から具体的に)
◆見積った課税所得の年数
◆見積った課税所得の金額


まで開示することにすれば、極めて透明性が高くなり非常に有用な投資情報になりえるでしょう。

企業価値をマルチプル法で簡便的に計算する際、PER(
株価÷一株当たり当期利益)を用いる方が比較的多い現状を考えると、当期利益(最終利益)に多大な影響を与える繰延税金資産の回収可能性の判断に関する透明性を高めることは、本当の意味で重要だと思います。

ただし、企業・監査人双方の反対は必須ですね。
 

本日は、鮒谷周史さんの年間プログラムでした。

朝4時半起きで上京し、朝10時~夜9時までの11時間(約2時間の休憩はさむ)、脳みそフル回転の一日で少々疲れ気味ですが、今回もたくさんの気付きがありました。

そのうちの一つで

抽象と具体を織り交ぜて話をしないと、相手の心には突き刺さらない

という話。

特に重要なのは具体例を提示すること。それも一つでは少ない。少なくとも3つは必要。

これを聞いて凄く納得しました。

我々の仕事でも全く同じことが言えるからです。

会計や財務の世界では、

理論(⇒抽象)がどうしても先行してしまいがちですが、実務(⇒具体例)での落としどころ(の例)を持っていなければ仕事になりません。

特に、同業他社の動向を意識するのが日本企業の文化ですから、事例や実務(⇒具体例)での落としどころを多く持っていることで初めて適切なアドバイスが可能になるわけです。

とは言え、理論的な部分を軽視するわけにもいきません。

要は、理論と実務を融合させて初めて、「生きたアドバイスが可能」になるのだと思います。

経営財務3174号 2014年8月4日 より

2014年7月25日に開催されたASBJの税効果会計専門委員会で、経団連によるIFRS・米国基準適用企業に対する「税効果会計(繰延税金資産の回収可能性)に関するアンケートの概要」を参考に、繰延税金資産の回収可能性について議論されたようです。

当該アンケートの概要から、日本基準⇒IFRS及びUSAGAAP(以下、「IFRS等」という)へ修正するにあたっての、繰延税金資産の回収可能性の判断に係る差異(実務上の対応)が、一部、読み取れます。

 <アンケート結果の概要>

調査期間 :6月から7月18

調査対象 IFRSまたは米国基準適用(予定も含む)企業58社(IFRS32社)

分析対象 :回答を得た39社(IFRS22社)

回答率 67.2

質問(自由記述方式) 

次の3点について,単体(日本基準)から連結(IFRS,米国基準)を作成するにあたり,繰延税金資産の回収可能性の判断の再評価・連結調整を行っているか?

①繰延税金資産の回収可能性の判断基準を,66号の5分類から変更しているか

②課税所得の見積り年数を66号の「5年」の目安から変更しているか

③繰延税金資産の回収可能性の閾値(「可能性が高い」から変更しているか)

66号の判断を連結で調整する会社多数

①については,単体の判断を連結でも用いるという会社もあったが,単体の判断をベースとして必要に応じて連結調整を行っているとの回答が多かった。特に,「スケジューリング不能な将来減算一時差異については,66号とIFRS・米国基準間に差異があるため連結で調整している」との回答が多数あった

②については,連結においても66号の「1年」ないし「5年」という課税所得の見積り年数をベースとする企業が多かった。「単体のほうが保守的な見積りができるので,連結では見直していない」,「見積り期間3年という,米国基準上の実務慣行等を参考にしている」との回答もあった。

なお,③については,変更している会社はなかった。


これだけでは詳細を掴むことは難しいですが、一つ注目すべき情報としては

「スケジューリング不能な将来減算一時差異については、66号とIFRS・米国基準間に差異があるため連結で調整している」との回答が多数あった

という個所ではないでしょうか。

これは日本基準における監査委員会報告第66号の会社区分が①以外(の②~⑤)の会社については、スケジューリング不能な将来減算一時差異については、回収可能性がないとして繰延税金資産を計上することはできない(評価性引当の対象)一方で、

IFRS等ではスケジューリングが不明確な将来減算一時差異であっても、将来、課税所得が発生する蓋然性が高い場合などには、スケジューリングが不明確であっても最終的には回収できる可能性が高い、といった判断根拠に基づくことが、想定されます。

なお、

「66号の判断を連結で調整する会社多数」

といった記載がありますが、これだけ見ると、IFRS等では66号の判断を適用できないといった誤解を与える可能性があるのではないか、と思います。

個人的には(私の経験上)あくまでも

結果として66号の判断を概ね利用(踏襲)しているが、一部だけIFRS等適用による修正が発生する

というニュアンスではないかと考えています。
 

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