公認会計士高橋正哉の実践ブログ

企業のビジョン達成を社外CFOの立場から実現する一方で、独立会計士又は上場企業の社外役員として自らも経営の一旦を担う筆者が、会計・財務の専門分野に限らず、日々の活動から、企業経営や自己成長のヒントとなるような事項・想いを素直に、ありのままに、お伝えすることを目的として綴っているブログです。

カテゴリ: コーポレートガバナンス

経産省から2014年6月30日付で「社外役員を含む非業務執行役員の役割・サポート体制等に関する中間取りまとめ」及び「社外役員等に関するガイドライン」が公表されています。

<中間とりまとめ>

(1)
社外役員等に期待される役割と企業のサポート体制に関し、実務上の参考となるよう、我が国企業のベスト・プラクティスを広く集め、具体的かつ包括的な姿を明らかにしました。

(2)
社外取締役のプラクティスとして、その幅広い活躍の実態を明らかにしました。すなわち、企業経営に関し、不祥事などマイナス面を防いだ事例もあれば、戦略的な投資判断などプラスに伸ばす判断を後押しした事例もありました。さらに、人事・報酬への関与についても具体的な事例を紹介しています。また、各事例では、社外取締役が、経営陣にアドバイスを与えるという形もあれば、経営陣に対するモニタリング機能を発揮している(チェックをし、是非を判断する)形もあることを示しています。したがって、社外取締役の役割は、法令上は、簡潔に「監督」と表されますが、現場の実態としては、様々な活躍が見られることを示しています

(3)
このような、社外取締役の、様々なありうる役割のうち、どれが重要で、どれを選択するか、したがってどのような人選を行うべきかは、企業の性質や経営戦略によって異なります
そこで、本中間取りまとめでは、社外取締役を導入した企業にも、導入の考え方や期待する役割について、積極的な情報発信を呼び掛けています(いわば「コンプライ・アンド・エクスプレイン」)。

(4)
さらに本中間取りまとめは、社外取締役と並んで、非業務執行役員として重要な監査役の役割にも光を当てています。ここでは、監査役が経営陣の行う経営判断について、違法性のチェックのみならず、妥当性のチェックも行い活躍している事例、法的権限を実際に行使している事例も紹介しており、監査役が、幅広く活躍し、実効性を発揮している事例があることを示しています

(5)
社外役員等に対する企業のサポート体制として、社外役員等をサポートするスタッフや活動資金の重要性はもちろんですが、(社外役員等は社内出身者に比して社内情報や社内人脈が少ないことから、)社外役員等への情報提供や、(“外部者”でも発言・貢献がしやすくなるような)取締役会のセッティング・社外役員同士の連携が重要であることを示しています。

<ガイドライン>

(6)
本中間取りまとめは、社外役員等に関するベストプラクティスとそこから得られる示唆をまとめた性格を持ちますが、実務において広く読まれ、活用いただけるよう、本中間取りまとめのサマリーを、「社外役員等に関するガイドライン」と題して、同時に取りまとめました。本ガイドラインは、本中間とりまとめに記載の示唆、つまり、社外役員等の導入・活用に際して考慮すべき事項のみを抜粋して記載しており、
①社外役員をはじめ非業務執行役員自身が職務を執行する際、
②企業、特に経営者が社外取締役の選任を検討する際、
③企業が、既に導入している又はこれから導入しようとする社外役員等の活用を検討する際、
などに手軽に参照され、各社が自社にふさわしい実効的なコーポレート・ガバナンス・システムを構築するためのツールとなることが期待されます。

ガイドラインは抽象的な記載に留まるので、イメージを掴むにあたっては、本文(社外役員を含む非業務執行役員の役割・サポート体制等に関する中間取りまとめ)を読むことをお勧めします。ページ数は53ページですが、比較的読みやすいので、短時間で目を通せます。

本文のP.7「1.3 中間とりまとめ方針」で以下のとおり記載されています。

なお、コーポレート・ガバナンスは、本来、各企業が自主的に取り組み、多様性が尊重されるべきものであって、過度に一律なルールを押しつけることになれば、企業が創意工夫を行わず、むしろ逆効果にもなりかねない

このため、中間取りまとめは、コーポレート・ガバナンスの向上に向けて意欲的に取り組む企業・社外役員を含む非業務執行役員のプラクティスをもとに、各企業・非業務執行役員が自主的な取組をする上で留意すべき事項をまとめたものとする。

本当にそう思いますね。社外取締役の設置義務化の議論も同様だと思います。
 

会社法改正法案が6月20日に参議院本会議で可決、成立しています。
会社法改正法案については種々の解説記事等が出ておりますが、特に気になる社外取締役の設置に関して私見を交えて記載したいと思います。

以下、経営財務3169号(2014年6月30日)等を参考に記載

今回の改正では
  • 監査等委員会設置会社制度の創設
  • 社外取締役を置くことが相当でない理由の開示義務付け
  • 社外取締役等の要件等の厳格化
  • 会計監査人の選解任等に関する議案内容決定権の監査役への付与
  • 多重代表訴訟制度の創設
  • 株主による組織再編等の差止請求制度の拡充
等が図られています。一部規定には経過措置があるようですが、改正法の規定が適用されるのは、3月決算会社であれば、平成27年6月の定時株主総会となりそうです。

この中で多くの上場会社にとって緊急性の高い課題であるのが「社外取締役を置くことが相当でない理由の開示義務付け」でしょう。

これを受け、3月決算会社をはじめ平成26年6月の定時株主総会において前倒しで社外取締役の選任が相次いでいます。

東証上場会社における社外取締役の選任状況について(東証プレスリリース 2014年6月17日)によると、全上場会社3,408社のうち、社外取締役を選任している会社の数は2,194社前年と比較して354社の増加)で64.4%前年と比較して10.2ポイント上昇)にまでなっているようです。

来年が増加のピークになると思われ、それを過ぎてしまうと「社外取締役の人選を慎重に進めた結果間に合わなかった」などの説明もしづらくなってしまいます。

なお、「社外取締役を置くことが相当でない理由」は

第327条の2 事業年度の末日において、・・・社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければばらない

とされていますので、当年度に係る定時株主総会で社外取締役を選任する予定であったとしても、前年度に係る定時株主総会で社外取締役を選任しなかった理由は説明しなければならないようですね。

それから、2年後には社外取締役設置の義務化を検討するそうですが、そもそも社外取締役の設置によってコーポレートガバナンスの強化という目的が本当に達成できるのか実質的に機能するのか、というのは深い議論が必要ではないかと個人的には思っています。監督機能の強化が社外取締役に課された第一命題なのかも知れませんが、経営的な助言(現経営陣の経営観や思考の枠外の意見)を述べてもらい、現経営陣もそれを積極的に受け入れてみる、そして競争力の強化につながる、という循環がないと、監督機能の強化という締め付けだけでは、なかなか機能しないのではないかと思います。

その他、参考ですが

役員賠償責任保険 「社外」狙い損保が強化 経営者への株主の目厳しく(SankeiBizより)

のとおり、保険会社もここは事業機会とみて積極的に動いているようですね。

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